言わずと知れた世界的名著、ピーター・ドラッカーの『マネジメント』。
その影響力は今なお衰えることなく…どころか、混沌としていく社会の中、これまで以上の輝きを放ち私たちを導いてくれています。
管理職の方であれば一度は読んだことがあるかもしれません。
しかし、結局のところ、
- 本の内容を自分の仕事にどう活かせば良いのか分からない・・・
- この本は概念的だから、すぐ実践できるものはないのかな・・・
- 読んだのは読んだけど、難解でよく分からない・・・
といった場所で留まっている方が結構な割合でいらっしゃるようにも思います。
もったいないです。これは。
また、この本はビジネスに特化したものだと捉えている方が多いのではないかと思いますが、それだけではありません。
ドラッカーが言うことを実践することで、仕事の成果を上げられるだけではなく、プライベートの人間関係も確実に良好なものになっていきます。
つまり、あなたの人生を豊かにしてくれる本なのです。
今世界中で大活躍している名経営者と呼ばれる人たちの多くも、ドラッカーからの多大な影響を公言しています。
私自身も自社の経営・人事においてドラッカーの考え方を多分に取り入れており、それが目に見えて成果に変わっていく瞬間を当事者として数えきれないほど経験してきました。
とはいえ、「そうは言っても、本を読む時間が取れないんだよ・・・」といった方が多いのも分かります。
そこでこの記事では、名著『マネジメント』の本質的な箇所を抜粋・凝縮し、皆様が明日からすぐに実践できる内容として分かりやすく説明したいと思います。
では、始めましょう。
【真摯さ】に勝るスキルはない
ドラッカーが本書で繰り返し語る言葉に、『真摯さ』というものがあります。
ドラッカーの言うことを(強引に)要約すると、
『真摯さ』のない人間は、何をどう頑張っても管理職(マネージャー)として成功しないよ。
ということです。
つまり、この『真摯さ』という言葉、これこそが本書を理解する上で最大のポイントとなります。
逆に、ここを押さえておかないと他の項目をいくら読んでも「効果ゼロ」だと思います。これは断言します。
真摯さとは何か?
真摯さとは、辞書などによると、
■まじめで熱心なこと
■ひたむきなさま
という風に定義されています。
色々な場面で聞きますよね。一般的には、
『弊社としては、このたびの事態を真摯に受け止め・・・』みたいな使われ方をされることが多いです。
しかし、ドラッカーにとっての『真摯さ』の意味は、辞書に書かれている内容だけではないようです。
原著において、『真摯さ』に該当する部分は英単語の『integrity(インテグリティ)』という言葉で表現されています。
この英語の意味は、「正直、誠実、高潔」です。
原著を日本語版に翻訳する際、翻訳を担われた方はこの『integrity(インテグリティ)』をどのように日本語に置き換えるか、相当に悩まれたそうです。悩み抜いた結果、『真摯さ』という言葉が選ばれたわけですね。
私としては、素晴らしい翻訳だと思います。「正直」だけでは足りないし、「誠実」なだけでも違う。
これらを包括的に示す言葉として『真摯さ』という言葉を選択されたことは見事というほかありません。
まとめると、本書が示す『真摯さ』の意味は以下のようになります。
■まじめ・熱心・ひたむき・正直・誠実・高潔
私はこれに、
■ブレない信念
を加えて自分流に解釈しています。
※朝令暮改はダメ、ということではないです。信念に沿っていけば、朝令暮改は「変革」として周囲の指示を集めるものです。戦術はコロコロ変わって良いと考えています。
マネージャーとして必要な、たった一つの資質。それが『真摯さ』。
ドラッカーは、「マネージャーとして始めから身につけていなければならないといけない資質が一つだけある。才能ではない、真摯さである」としています。
「人の弱みに目を向けてはならない」と説くドラッカーですが、「真摯さの欠如」に対しては極めて厳しい姿勢を一貫しています。
具体的には、以下のように記されています。※記述は要約しています。
- 人間にはひとつだけ気にせざるを得ない弱みというものがある。それが真摯さの欠如である。真摯さが欠如した者だけは高い地位につけてはならない。
- 真摯さよりも、頭脳を重視する者を昇進させてはならない。そのような者は未熟である。有能な部下を恐れる者を昇進させてもならない。そのような者は弱い。
- 判断力が不足していても、害をもたらさないことはある。しかし、真摯さに欠けていたのでは、いかに知識があり、 才気があり、仕事ができようとも、組織を腐敗させ、業績を低下させる。
- 真摯さは習得できない。仕事についたときにもっていなければ、あとで身につけることはできない。
- 真摯さはごまかしがきかない。 一緒に働けば、その者が真摯であるかどうかは数週間でわかる。 部下たちは、無能、無知、頼りなさ、無作法など、ほとんどのことは許す。しかし、真摯さの欠如だけは許さない。そして、そのような者を選ぶマネジメントを許さない。
どうでしょうか。物凄く具体的で、実務的とすら言えます。
そして社会人の方であれば、「なるほど」と思わされるものがありませんでしたか?
「真摯じゃない同僚や上司」の顔が頭に浮かびませんでしたか?
同時にこれらのことって常に自分自身が意識しておかないと、気を抜けばすぐに自分も「真摯じゃない人」になってしまいそうだと思いませんか?
真摯ではない人の特徴
それではドラッカーの言葉を借りながら、「真摯ではない人」の特徴を以下で見ていきましょう。
- 相手の強みではなく弱みばかりに目を向ける者
- 何が正しいかということよりも誰が正しいかということに関心をもつ者
- 真摯さよりも頭の良さを重視する者
- 部下に脅威を感じる者
- 自らの仕事に高い基準を設定しない者
- 実践家ではなく評論家である者
まあ、これも具体的に言われていますね。
真摯さは理解した。では、何をすれば良い?
いよいよまとめです。
そしてここからが大切です。
学ぶだけでは何もしていないことと同じですから。
運営する側の人たちへ
ドラッカーが熱心に言っていること、一つだけで良いので守ってください。
それは、
真摯さのない人物には、いかなる役職も与えてはダメ
ということです。
「日頃言っていることを昇格人事に反映させなければ、 優れた組織をつくることはできない。本気なことを示す決定打は、人事において、 断固、人格的な真摯さを評価することである。 なぜなら、リーダシップが発揮されるのは、人格においてだからである」
この言葉の通りです。
ここを間違えるだけで組織は傾きます。
見せかけの実務能力だけに惑わされてはいけません。
心して、人員配置を決めてください。
プレイヤーの人たちへ
生涯現役のプレイヤーを目指すにせよ、これから管理職を目指すにせよ、皆さんが守るべきことは一つ。
人から「真摯ではない」と思われないこと。感じさせないこと
です。
一度そう思われたらかなり厳しい、と考えておいてください。
人格を変えるといった次元の話ではありません。
そんなことは不可能ですし、やる必要もありません。
人格を変えるのではなく、
仕事上の信念を持って、それを頑なに守る
ということです。
恐ろしく性格が悪かろうが何だろうが、これができていれば何の関係もないのです。
以上、世界的名著「マネジメント」の「最重要ポイント」をお伝えしてきました。
最後までお読みいただきありがとうございます。
皆さんの人生が豊かになることを願っています。共に頑張りましょう。
■本日取り上げた本はこちら【社会人必読バイブル】